声や身体の関係性を問うような作品を制作してきた作家百瀬文のヨーロッパ初個展。映像を見るという行為を問い直しながら、映像というメディウムが不可避に孕む主体の不均衡性を探る。観る者の優位的な視線を不気味なまでに反転させ、声と身体、言語とゲスチャーの乖離を巧みに仕掛ける百瀬の映像は、詩的でユーモラスである。不確かで曖昧な他者との関係性やズレを浮き彫りにする作品群は、現代社会に潜む暴力的な構造と向かい合い、他者と同じ地平に立つことはいかに可能かと問いかける。本展覧会では、同名の写真作品とともに新旧映像作品4作を発表。オープニングでは、彼女がこれまでに行ってきた参加型パフォーマンス《定点観測》を13名の参加者とともに英語のアンケート用紙を用意して行う。
キュレーション 根来美和